コンクリート工学研究室には,鉄筋コンクリート構造物を構造的側面から研究する構造グループと材料的側面から研究を行う材料グループがあります。
材料グループ(丸山一平 教授・五十嵐豪 准教授・アイリ アブドゥシャラム 助教)
材料グループは,建築に利用される材料の問題を幅広く扱い,特にコンクリートに関しては,セメントの水和反応から,水・熱移動,収縮やクリープ,構造ひび割れ,耐久性といった様々な現象をナノレベルからメートルレベルまで,秒単位の現象から100年単位の現象を予測するモデルの開発を行っています。また応用研究として,コンクリートガラを骨材として利用する環境に優しいコンクリートの実用化研究,さまざまな産業副産物をコンクリート中に用い二酸化炭素排出量の低減と良質なコンクリートの施工に関する技術の研究,超高強度コンクリートの実用化研究なども行っています。近年では,コンクリートがなぜ収縮するのか,という100年にわたった問題を明らかにし,その成果をもとに材料開発や,より詳細なコンクリート性能の予測手法の検討を行っています。また,建築材料学の対象は材料工学だけではありません。例えば,見た目が古ぼけていくエイジングの問題をモデル化し,美観をどのように制御するかということを検討したり,新しい材料ができたときに,その材料を経済的にどのように評価すべきか,といったことも研究対象になります。建築材料分野の範囲は広く,何をやっても研究になります。知的好奇心のある学生が活躍できる場所です。
当グループでは,構造グループとともに,本質とはなにかを徹底的に突き詰める研究形態をとっています。なぜそうなるのか,どういったことが起こりえるのか,という材料・構造両方から向き合い,新しいニーズにすぐに対応できる思考体系・習慣などを研究を通じて理解してもらいたいと思います。また,下にもありますが,当研究室の研究は,チームを組んで行うところにも特徴があります。チームでのリーダーシップ,組織と自分の関わりあいは,本研究室に所属することで自然と身につけることができるでしょう。
構造グループ(日比野陽 准教授)
鉄筋コンクリート構造物は耐久,耐火・耐震性に優れ,構造物として現在非常に多く採用されています。当研究室では,特に構造安全性に関わる研究を行っています。鉄筋コンクリート構造物は,個別に建設するものであるため,本質的に個別建物の構造安全性は実証できません。完全に非破壊で性能を評価できる技術も開発されていません。また,実験をして壊れてしまうと使い物にならないからです。そういった意味で,個別建物の安全性を考えていく上では,解析という概念によって安全性の検証に頼る必要があります。 一方で,解析は構造物のモデル化、材料特性のモデル化によりどんな答えも出てきます。なるべく大きな部材,部分架構,架構の破壊実験を通じて建築構造物の安全性確保のメカニズムについて明らかにするとともに,学生諸君には,構造物がどのように壊れるのかを実感し、解析モデルだけに頼らない構造専門家としてのセンスを身につけてもらいたいと考えています。設計については,モデル化しやすいような構造物を設計するのではなく,構造物をうまくモデル化するようになって欲しいと考えています。これは,構造物の本質とは何か,ということを研究を通じて身につけることができると考えています。
材料の高強度化と解析技術の驚くべき進歩には、これまで考える必要がなかった力の流れの重要性や,コンピュータに振り回されない適切な構造物のモデル化の重要性を改めて認識させられるます。鉄筋コンクリート構造物全体の力の流れから接合を含む部材レベルでの力の流れを分かり易く捉え,鉄筋コンクリート造の配筋詳細,部材,復元力特性のモデル化に反映させることは非常に重要な課題です。これらは,新築の鉄筋コンクリート造建築物に対してだけではなく,既存の鉄筋コンクリート造建築物をいかに有効利用するか,すなわち耐震補強や空間拡大を促進し,既存ストックの活用を図ることにもつながり,今後,日本の建築市場の多様化に必須な学問であると考えられます。また,構造物の安全性を評価するには,外力として地震との対応が重要な着目点になります。実際の建築構造物の地震時の挙動を測定し,解析モデルの検証を行うと共に,大地震時の損傷の程度を即時に把握し建築構造物使用者の安全・安心の確保のための研究も主軸においています。
学生へのメッセージ
研究による教育は研究の仕方や細かいコンクリートの知識を習得するだけのものではありません。研究や実験を通して以下のような生きる上で必要な様々な事柄について触れることができます。特に実験を行うことで学べることは非常に大きいということを知って欲しいと思います。
- 過去を学び新しい事や物を作る手法
- オリジナリティの発揮の仕方
- 段取りの大事さ
- 人を動かすリーダーシップ
- 情報を取捨選択して統合する技術
- 国際的視野